トップの本気で社員の意識改革を

 福岡市の百貨店『株式会社岩田屋三越』。女性が働きやすい環境整備は長年行ってきたが、現在はビジネスのやり方や働き方を見直し、全社員が一緒に実感できる仕組みづくりも進めている。例えば、2018年からスタートさせた1日の拘束時間30分短縮は、所定労働時間と休憩時間を各15分短縮して可能にした仕組みとして全社員を対象にしており、社員のモチベーション向上にも繋がっている。制度と共に重要なのは社員の意識改革だ。トップが本気で取り組むことで確実に変化を遂げている。

時短勤務のバイヤーも誕生

 時短勤務制度は以前からあったが、バイヤーや外商など専門性が高く業務の多い部署での利用者はいなかった。制約のある社員は別部署に異動するか、アシスタント職に就くなど、一旦キャリアを中断するポジションに就くケースがほとんどだったが、業務フローの抜本的な見直し等により、時短勤務バイヤーが誕生した。資料作成や分析など計画に費やしていた時間を減らす、会議資料はA4サイズ1枚に収める、など業務の無駄の削減と効率化を全社的に進めていることが助けになっている。

会議の様子
バイヤー対象細谷塾の様子。営業部長と商品担当長を対象とした細谷塾とともに、細谷社長自らが直接指導する勉強会を定期的に開催。

改革1 シフトの固定化で時間外労働が大幅に減少

 勤務時間には様々なシフトがあり、通常の営業時間には早出と遅出の2交代で対応しているが、早出社員が閉店後も残業したり、遅出の社員が開店前に出社する等、シフトに関係なく勤務時間が営業時間とほぼ同じの社員も多く、長時間勤務になりやすい環境が長年の問題だった。そこで部門ごとに早出もしくは遅出のシフトを固定化し、時間内で業務を行うことを徹底した。結果、早出の社員は定時に帰りやすくなり、遅出の人も早くから出勤する頻度が減り、時間外労働が大幅に減少した。

改革2 インターバル休息時間ルール

 催事や売場レイアウト変更などで遅くまで残業をした場合、翌日の始業まで必ず一定時間空ける「インターバル休息時間ルール」を2010年10月に導入。また閉店後に残業して完成させていた売場の切り替えを営業時間内に行うことで残業を削減して、業務の取組み方も変化させた。2017年4月からこれまで10時間だったインターバルを11時間に拡大し、短時間で生産性を高める方法を考えるきっかけにした。

取締役 執行役員 総合企画部長 和田 金也さん(左)とバイヤー 神崎 悠さん(右)画像

取締役 執行役員 総合企画部長 和田 金也さん(左)

 働きやすさだけではなく、仕事の内容・取組み方も以前とは変化しました。社員の意識も変わってきました。社員のキャリア・能力を活かすことが、企業力を高めるために大切だと思います。

 

バイヤー 神崎 悠さん(右)

 育児休暇から復帰した際、業務フローが見直され、何よりチーム内のメンバーの協力体制を感じたので、バイヤーに戻る決心をしました。子育て、家庭、仕事に忙しい毎日ですが、充実しています。