仕事を整理して労働時間を軽減

 久留米市で事業所や施設向けの給食、弁当・夕食宅配を手掛ける『株式会社セイブ』。15年前は定時退社の概念もなく、残業は当たり前、正社員しかできない仕事も多く休みも取れない状況だった。そこで社員の仕事の棚卸しを行い、属人化していた業務を他の従業員とで共有していった。また、葬儀弁当や仕出し弁当など突発的で受注量が変動する事業を思い切って廃止し、毎日一定量を生産する事業に絞り、全体の負担を減らした。

勤務時間が見える仕組みで、残業を減らす

 社員が残業した場合、社長まで報告。月20時間を越えた場合は、社員が改善策を記入した報告書を提出して部門長と社長からコメントをもらい、翌月に残業削減の対策をとっている。このフィードバックする仕組みと社員一人ひとりの残業時間を社長も把握することで、残業が常態化しないようにした。一方、減らした残業代20時間分は給与のベースアップとしたので、社員も業務改善に力が入る。さらに残業が減ったことで、完全週休2日制の実施が可能になった。結果、生産性が向上し、売上も向上している。

改善提案書画像
従業員による自発的な業務の見直しを後押しするための改善提案書。改善後の結果を報告する仕組みで、多く出した社員は表彰される。

改革1 多能工化のために、細かくマニュアル作成

 電話受付は全社員で対応。配送は事務員も担当。営業担当が手の空いた時間に弁当の盛り付けも行う。そして、誰でも同じ結果を出せるよう業務マニュアルを全社的に作成。例えば指導者により曖昧になりやすい、工場のまな板の洗い方なども写真入りで分かりやすく説明。物品の保管場所も指定するなど、ちょっとした工夫が無駄を減らすことに繋がっている。

改革2 仕事の分業化を段階的に実行し、無理なくできる体制に

 まず15分単位で仕事を書き出すことから始め、(A)重要な仕事、(B)経験を積めばできる仕事、(C)教えれば誰でもできる仕事、に分類。そして(C)から順に複数で業務を対応できる仕組みに変えていった。結果(C)の「弁当の見本づくり」はパートも担当できるようになり、一人しかできなかった(B)の料理も複数が担当できるよう習得表を作成して教えていった。

代表取締役社長 田中 憲治さん(中)、生産管理本部 本部長 山田 晃之さん(左)、製造部リーダー 大坪 真也さん(右)画像

代表取締役社長 田中 憲治さん(中)

会社、社員、地域の「3方よし」、つまり全体最適が目標です。押しつけではなく、社員とコミュニケーションをとりながら改革を進めています。私も早朝の配送準備を担うなど、できることは率先して行っています。

生産管理本部 本部長 山田 晃之さん(左)

製造部リーダー 大坪 真也さん(右)

 社長や上司が部下の立場で物事を考えてくれ、従業員も相談しやすい風通しのよい職場だと思います。また他の部署が困っていたら自発的に手伝うなど、助け合いの社内風土があり、働きやすいです。