社員の定着を目指した経営改革

 特別養護老人ホーム、デイサービスセンター、 ショートステイ、居宅支援の介護事業を北九州市で行う『社会福祉法人南風会ヘルシーハイム』。2000年に介護保険制度が導入された後、経営が厳しくなり、2年後には離職率が60%となった。働きやすい職場をつくり、社員の定着を図るために、2003年にIT(グループウエア)を導入。入居者の介護情報や社内の連絡事項など、さまざまな情報を共有できる仕組みをつくり、業務の標準化と効率化を図った。また、ITの導入と同時にノー残業を徹底。パートを含む全社員が利用できる保育園も運営し、育児休暇取得後の復帰率は100%となっている。

何でも伝え合える風通しのよさ

 問題に感じたことや気づいたことは、常設の「何でも改善箱」に投書し、直接理事長に伝えることができる。社員間の感謝の気持ちは、名刺サイズの「トークンカード」を渡して見える化している。年1回、カードの取得枚数が多かった社員の表彰式をホテルで開催。当日は家族連れで集まり、ゲームなども交えた楽しい会となっている。こうした取組みは、コミュニケーションの円滑化や、サービスの向上にも役立っている。

業務の様子画像
iPadで入居者の健康状態や食事の記録などを入力。情報のデータベース化で、業務の引継ぎがスムーズに。

改革1 I Tを活用して情報を共有

 2003年にIT(グループウエア)を導入し、紙ベースで管理していた帳票を電子化。育児休暇中の社員も含め、社内メールは自宅でも使える。全員で情報を共有できるため、業務引継ぎの打ち合わせや朝礼が不要になり、仕事の効率が上がった。

改革2 評価基準の明確化と同一労働同一賃金の導入

 人事考課制度を見直し、わかりやすい評価基準を設定。職種ごとに職務内容を洗い出し、求められる役割と技能を明らかにした。これを基に職務に応じた時間給を割り出し、正社員も契約社員も同じ基準で賃金計算ができるようになった。

改革3 定時に帰ってしっかり休める職場環境

 時間内に終わらない業務は次の担当に引き継ぐなどサービス残業をしない労務管理を徹底。打ち合わせや会議も業務時間内で行い、残業時間が大幅に削減された。トップの呼びかけで年次有給休暇の消化も進み、取得率は2017年で86%に。

理事長 栗田 淳二さん(中央)、事務局主任 勝野 千絵さん(左)、デイサービス 柿 瞳さん(右)画像

理事長 栗田 淳二さん(中央)

 社員一人ひとりが認められ、やりがいにつながる評価を大切にしてきました。今後は104日の休日を120日まで増やし、趣味や子育ての時間をもっと取れるようにしていきたいです。

事務局主任 勝野 千絵さん(左)

 ノー残業のため退社後に好きなことができ、仕事にも集中して楽しく取り組めています。社内メールは家でも見られるので、休みが続くときなど事前に確認できて助かっています。

デイサービス 柿 瞳さん(右)

入社してから育児休暇を2回取得しました。休暇前に上司との面談があり、復帰前には子連れで短時間の勤務をさせてもらえたので、1年間休んでも不安なく業務に戻れました。