スピード感のある改革を

 より働きやすい職場を目指すきっかけは、「結婚しても出産しても働き続けたい」という職員の声だった。人材確保の課題もあり、2004年から経営戦略としてスタート。管理職抜きの「職場環境改善提案会議」を発足し、良い案はトップダウンで即決し、スピード感をもって実行を進めた。推進の過程では課題も出てきたが、トップが説得したり、「全員の希望を全て叶えるのは困難」を前提に、職員同士が自主的に話し合いで歩み寄るなどして問題を解決していった。

多様な働き方の実現へ

 現在、課題だった看護部の離職率は1桁台に下がり、職員満足度の向上により、優秀な人材の確保と定着につながった。それに伴い医療の質が向上し、患者の満足度も上昇。WLBの充実の評判を聞いたことで、求人が増えるという効果もあった。現在は制度を利用した管理職が多く誕生し、良いロールモデルになっている。男性の育児休業取得率も全国平均3%程度の中、18%と極めて高い。今後も「職員が働きがいを持ち、意欲と能力を最大限引きだせる職場」を目指す。

病院内の様子画像

改革1 キャリア形成支援の取組み

 キャリアファイルにより個人の目標を管理し、定期的な面談を行いながら能力の開発を支援。社外研修は勤務扱いとし、参加費・交通費・日当を支給。中途採用者の研修や、自主テーマでの研究を発表する「芳野病院学会」の開催など、現任教育に力を入れる。
 

改革2 柔軟な働き方への取組み

 職員の働き方に柔軟に対応した結果、現在57種類の勤務シフトがある。育児・介護のための常勤短時間勤務制度、夜間専従看護師の登用など、柔軟な働き方の環境を整備。育児休業取得の奨励も行っており、男女ともに取得が定着している。

改革3 時間外縮減・有給休暇取得の取組み

 現場でのマニュアル整備により、業務を標準化。複数の患者をチームで担当する「固定チームナーシング」、支援制度利用者の均等化のための配置転換、部署間で応援し合える体制作りを行う。1週間の連続休暇取得奨励制度は管理職の反対が多かったが、トップが説得して実行。現在は上司が率先して取得している。

理事長・院長 芳野 元氏(左)、看護師・地域包括ケア病棟師長 原田 梨恵さん(右)

理事長・院長 芳野 元氏(左)
 早くからWLBの充実に取り組んだ成果として、部下や職員のキャリアと人生を応援しながら組織の業績・結果を出し、自らも仕事と私生活を楽しむ上司「イクボス」が増えています。

看護師・地域包括ケア病棟師長 原田 梨恵さん(右)
 管理職として初めて産休・育休を取り、時短制度を利用する時、院長や上司の励ましが、ここで貢献する意欲につながりました。私自身も部下への言葉がけを意識して行っています。